カメラマンが本気出せば、これくらい……」なんて肩肘を張るつもりはない。ただ、そこに「お手本」があるなら、ついピントを合わせにいきたくなるのが性分なのだ。
【事情】雨と、たけのこと、私のズボラ
先日の馴染みの斜面で泥まみれになって掘り出した「たけのこ」がキッチンに鎮座している。
あく抜きまではなんとか終えた。だが、問題はここからだ。
「鮮度が落ちる前に、丁寧な一品に仕上げて、おいしく食べたい」
妙な義務感が、胸の奥でチリチリと音を立てる。
ところが、この日はあいにくの雨だった。買い物に出るのも億劫だし、何より胃袋が「今すぐ何かを入れろ」と暴動を起こしている。
私は、この立派な初物を、最も安易で、最も「楽」なルートへ放流することに決めた。
包丁一本で、旬を切り出す
凝った煮物を作る気力も、ましてやメンマ風に味を染み込ませる根気なんて、今の空腹の前では無力だ。
「だってお腹が空いているんだ。人間だもの」
そう心の中で言い訳しながら、あく抜きしたてのたけのこを、ただひたすらに薄切りにしていく。
包丁がサクッと通るたびに、部屋の中にふわりと立ち上がる瑞々しい土の香り。
素材のままの、飾らない白。これを、今日のお昼にそのままドボンと乗せてしまおう。
パッケージに、そっと寄せてみる(数分間の格闘)
さて、ここからはちょっとした「あそび」の時間だ。
手にしたのは、インスタントの袋麺。
ふと目に飛び込んできたパッケージには、それはもう完璧な黄金比で盛り付け例が描かれている。
ここで「インスタントなんて……」と投げ出すのは、なんだか負けた気がする。かといって「本気」を出すのも、お昼ごはんとしては重すぎる。
結果、私の執着心は、非常にどうでもいい方向へ牙を剥いた。
お昼前の、ほんの数分。
卵の位置を箸でミリ単位でずらし、麺のうねりをパッケージのカーブにそっと似せてみる。
そこに、さっき切ったばかりの「たけのこ」を、メンマのふりをして置いてみた。
「あ、これは楽な方向に流れたな」という自覚はたっぷりある。
パッケージの主役は茶色く艶やかなメンマだけれど、こちらは真っ白な、ただの薄切りだ。
でも、昨日の泥だらけの記憶が、既製品のスープに不思議なリアリティを添えてくれる。この「手抜きの本気」が、案外楽しいのだ。
回り込みの末に見えた、小さな景色
インスタント麺を、パッケージに寄せて盛り付ける。
たけのこを薄切りにする。
たったそれだけのことなのに、いつもの「雑な一人飯」が、なんだか愛嬌のあるものに見えてくるから不思議だ。
「たけのこをどう片付けるか」という悩みは、いつの間にか「この数分をどう面白がるか」に変わっていた。
レンズ越しに見る一皿は、誰かの正解をなぞりながらも、今の私の「ゆるいピント」にしっかり馴染んでくれた。
プロとして現場で見せる顔とは違う、キッチンでの少しだらしない、けれど確かな満足感。その隙間が、雨の日の昼下がりを少しだけ明るくしてくれた気がする。
キッチンには、まだ出番を待つたけのこたちが山をなして控えている。
「とりあえずラーメンに乗せる」という禁じ手以外に、この白い山を攻略するルートが今の私には見当たらない。
今時は、検索の前に「AIに聞く」というのが常識らしい。ホントか?!
結局のところ、自分一人の経験値で辿り着ける現像の解像度には限界がある。
だからこそ、この季節、他の実践者たちがどのように竹の子と向き合い、その『調律』の最適解を導き出しているのかを、僕はもっと素直に、どん欲に探してみようと思う。
先人たちが磨き上げたレシピという名の『設計図』。そこに自分のピントを重ね合わせてみたとき、昨日までは見えていなかった新しい春の色が、きっとクッキリと浮かび上がってくるはずだ。
私は、明日もまたこの白い素材と向き合いながら、もっとスマートな「回り込み方」がないものか、ニヤニヤと考えることに決めた。
未解決:和食の枠を超えた、たけのこの新しい「消化ルート」の開拓。
今回の格闘を支えた「被写体」たち
今回の「再現あそび」で使用した、愛すべき機材とメイン被写体をご紹介します。
① 今回の「メイン被写体」:明星 チャルメラ
リンク
「カメラマンが本気で盛り付けを模索した、今日の主役。たけのこの白さを最も美しく受け止めてくれる、もちろん店舗の油そばも好きだが、まとめ買いしておくと雨の日の『盛り付け修行』が捗ります。」
② 日常を「作品」に変える魔法:OM-1 Mk2(私のメイン機の新型モデル、おすすめです)
リンク
「お昼前の数分、手持ちでサッと撮ってもたけのこの繊維を逃さない描写力。椅子に座ったまま、最短距離で『正解』に寄れるこのレンズは、私のズボラな食卓を、一瞬だけスタジオに変えてくれる魔法の杖です。」