この記事はOpenCode + Obsidian Vaultのパイプラインでボイスログをブログ用に構造化、その後に文章の加筆、修正を行っています。
「観測」から記録、そして発信へ
朝食のあと、パソコンに向かいながらコーヒーを飲む。
前日の撮影データやメモを見ながら振り返る。
「本当はインデックスプリントして壁に貼り付けてにやにやしたいのだが、そこまでなかなかできていない。やはりプリントすると、全く違うものが見えてくる。」
——そんな心の声を抱えつつ、モニターとメモを見比べて録音を始める。
昨日の撮影で気づいたこと、今日の予定、ふと頭に浮かんだ違和感。
この「観測」の習慣は、カメラマンである私のコアだ。
シャッターを切ることと同じくらい、日常を言葉で切り取ることに意味があると思っている。
問題は、そのあとだ。
観測したものを記録し、整理し、構造化する。
撮影日誌としての体裁を整え、現場メモを時系列でまとめ、次回の撮影に引き継ぐべきポイントを抽出する。
この「現像工程」に、気づけば1回の撮影あたり2〜3時間かかっていた。
撮影して、セレクトして、現像して、納品して——その合間に記録をまとめる。
そんな生活を半年続けて、「これ、自分の集中力が持たないな。。。」と素直に思った。
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新しい現像工程の話
写真の現像は、暗室からLightroomに移って劇的に効率化した。
露出を合わせ、ホワイトバランスを整え、色を調整する。
あれだけ暗室で時間をかけていた作業が、パラメータ操作に変わった。
記録の整理も同じフェーズに来ていると思う。
私の現行フローはこうだ:
Voice log(60秒) → AIが構造化 → 過去メモ検索 + ボリューム調整 → 手直し → 記録として完了(→ 必要な時だけブログ化)
録音した内容をAIに投げると、話題が少し雑に飛んでもうまくまとめてくれるのが助かっている。
朝のコーヒーを飲みながら
「そういえば昨日の撮影で……」
と脈絡なく喋った内容が、昼には構造化されたメモとして仕上がっている。
合っているとか、間違っている。とかが大切じゃない。
写真と同じで、そこでどう思ったか?
——カメラなら設定を変えればいいだけだし、記録なら追記・修正していけばいい。
AIが組み立てたざっくりとした構造を読んで、「ちょっと違うんだよなぁ!」とか「そうそう、でもこうも感じてた!!」と書き足していく。
そのプロセス自体が、自分の考えを整理することにつながっている。
このパイプラインの「AIが構造化 → 過去メモ検索 + ボリューム調整」 の部分を、AIエージェントに手伝ってもらっている。
現在使っているのはOpenCodeというCLIベースのAIコーディングエージェントだ。
なぜOpenCodeなのか — WebブラウザとCLIの比較
「ブログの下書きくらいChatGPTでよくない?」と言われることがある。
この問いの背景には「GUIアプリで十分では?」という前提がある。
だが、この2つは比較対象にならない。OpenCodeはChatGPTをモデルとして呼び出せるからだ。
比較すべきはWebブラウザ経由とCLIベースの違いであって、モデルの違いではない。
| 比較項目 |
Webブラウザ(GUI) |
CLIベース(エージェント) |
| 主な用途 |
即時的・直感的な対話、補助 |
定型業務の自動化、システム統合 |
| 作業範囲 |
ブラウザ内(閉じた空間) |
ファイル、API、OS全体 |
| 導入障壁 |
低い(誰でもすぐに使える) |
高い(環境構築・コマンド知識が必要) |
| 持続性 |
セッション完結型 |
仕組み化・完全自動化型 |
ブラウザでの対話は「今日の作業」を楽にするが、CLIは「明日の仕組み」を作る。この両者は道具としてのピントが根本的に異なる。
CLIを導入することは、単なるツール利用から「環境そのものを自分の意図で設計する」段階への移行だ。
GUIで伝わるか、という問いについて
確かに、「ブログの下書きを生成する」というタスクだけならGUIで十分だ。
でも、私がやっているのはそういう話じゃない。撮影日誌や現場メモの整理が求めているのは、時間軸をまたいだ一貫性だ。
- 3ヶ月前の同じロケーションで、何を課題に思ったか
- 前回のクライアントとのやり取りで、どんな調整をしたか
- 過去の失敗から、今回どの設定を変更したか
これらは「今」だけでは完結しない。過去のナレッジ全体を参照しながら、初めて意味を持つ記録になる。
GUIのChatGPTはその「全体」を参照できない。参照したいなら都度コピペしてコンテキストに詰め込むしかなく、すぐに溢れる。
CLIベースのエージェントがやっているのは、「今の作業」ではなく「環境ごと動かす」 ことだ。
ローカルの全ファイルを読める。Obsidian Vaultの構造をそのまま認識する。過去の判断基準を踏まえた上で構造化メモを生成する。
その出力を、またVaultに保存する。
GUIでこれをやろうとしたら、ファイルを一つ一つ開いてはコピペし、チャットの履歴はすぐに消え、また最初から説明し直す
——そんな繰り返しになる。CLIはその「繰り返し」を仕組み化する。
GUIの魅力は「手軽さ」と「即応性」だ。
CLIの魅力は「持続性」と「統合性」だ。
撮影日誌を「今の作業」として片付けたいならGUIでいい。
でも、撮影日誌を「次回に活きる資産」として積み上げたいならCLIの方が向いている。
これは優劣ではなく、目的の違いだ。
手軽さと本質的な自動化の間の距離は、道具への関心の深度で決まる
——どちらが正しいという話ではなく、どこに自分のピントを合わせるかの違いだ。
OpenCodeを選んだ具体的な理由
OpenCodeを選んだ理由はいくつかある。
一つは、それまで使っていたClaude Codeからの移行経緯だ。
Claude Codeも良かったが、一般的なプランでは時間とトークン量の制限が厳しく、作業が進まなかった。
OpenCodeに移って約1ヶ月。
多少の違いはあるが、慣れればそれほど違和感なく使えている。加えて:
- オープンソース(GitHub 179Kスター)で中身が見える
- 無料モデル(deepseek-v4-flash-free)でも実用十分。日々の資料作成やブログの下書き生成なら無料枠で回せる
- マルチモデル対応。必要に応じてClaudeやGPTも呼べる
- LSP連携でコード補完もしてくれる。ブログ用や納品用へのリサイズやシャープネス加工などをするのに、PowerShellやPythonのスクリプトもよく書くので、ターミナル一本で済むのが地味に助かる
- サーバー所在地。OpenCode Go経由のDeepSeekは中国以外の国にある。公式のDeepSeekサーバーが中国にあることを考えると、これは地味に大きい——データ所在地の選択肢としても意義がある(執筆時確認: Go公式ドキュメントに「US, EU, Singaporeでホスティング」「zero-retention policy」と明記)
もちろん、AIエージェントは万能ではない。
生成された下書きは気持ち的には「8割完成品」(実作業としては5割くらいか?)だ。
具体的な数値の確認、写真との整合性、微妙なトーンの調整は自分でやる必要がある(実作業としては残り5割。。。だが、気になるところを書き直していく感じなのでそれほど苦にはならない)。
ただ、0から書くより圧倒的に速い。
3ヶ月かけて育てたナレッジがAIの「声」になる
以前の記事(「ナレッジ整備に3ヶ月かかる理由」)でも書いたが、AIに記録の整理を手伝ってもらうには、まずAIに「自分の視点」を渡さなければならない。
その「視点」の中身は:
- 過去に書いた42本の撮影日誌・ブログ記事全文
- 撮影現場での判断基準(なぜF8を選んだのか、なぜISOをそこに固定したのか)
- クライアントとの交渉で学んだこと
- 失敗・成功のパターン
- スタイルガイド(文体・トーン・NGワード)
これらをObsidian Vaultに構造化して突っ込み、AIエージェントがいつでも参照できる状態にする。
ここまでに約3ヶ月かかった。
3ヶ月というと長く感じるかもしれない。
ただ、このブログを読んでいる人なら、すでに自分の中にも似たようなナレッジがすでに眠っているはずだ。
それをAIが読める形に整理するだけで、最初の3ヶ月は必要だ。
逆に言えば、それだけの投資をすれば、あとはAIが記録のたたき台を作ってくれる。
記録の自動化がもたらすもの
このパイプラインで一番変わったのは、「観測」に集中できるようになったことだ。
以前は「今日の気づきを残したい」と思っても、「撮影日誌に起こすのが面倒だな」という壁があった。
今はVoice logを残してAIに投げると、構造化されたメモが返ってくる。
撮影日誌としての記録、レポートとしての整理、現場メモの統合
——それらが自動的にまとまり、次回の撮影への引き継ぎ事項としても機能する。
同じ被写体、同じロケーション、同じクライアントであれば、前回の判断基準や調整値が参照できる状態になっている。
私はその中から「これは次回に活かせる」「これは発信してもいい」と思うものを選び、事実確認と肉付けをするだけでいい。
そして、その先にブログとして出すかどうかを判断する。
撮影の本質は観測だ。観測の質を高めれば、結果的に記録の質も上がり、発信の質も上がる。
AIエージェントに「現像」の一部を手伝ってもらうことで、私は観測に時間を使えるようになった。
カメラマンがAIを使う意味は、仕事を奪われることではなく、観測の質を上げるために時間を再配分することだと思う。
OpenCode(リファラルリンク)
無料でダウンロードして試せる。Goにサブスクライブすると双方$5クレジットが入る。私は無料モデル(deepseek-v4-flash-free)をデフォルトで使っていて、有料モデルは設計やレビューのときだけ呼び出している。無料でここまでできるのか、というのが正直な感想だ。