ボトルの中で浮かんだ一葉が、偶然にも綺麗なハートを描いていた。
15時の決断
西日が傾き始めた15時。
フロントガラスに積もった黄色い粉末を眺めながら、ようやく重い腰を上げた。
気づけばもう、こんな時間だ。
天気予報と自分のやる気の折り合いがつかず、数日間逃し続けていた洗車の機会。
それが今日、ようやく巡ってきた。
4月半ばを過ぎ、ニュースでは各地ですでに夏日だといっている。
この時間になっても、外気には動けば汗ばむほどの熱気がまとわりつく。
ホースを伸ばし、勢いよく水を放つ。
冷たさが火照った身体に直接染み渡る。この「水」と「熱」のぶつかり合いが、今の季節らしい。
視界の現像
「あぁ、やっと視界がクリアになる」
フロントガラスを覆っていた汚れが、流れる水と共に消えていく。
見えにくくなっていた風景が物理的な解像度を取り戻していくこのプロセスは、自分にとって一種の「整え」に近い。
洗車という作業は、不思議と「終わらせる」こと自体が目的になりがちだ。
だが、本当に大切なのはその後のリフレッシュにあるのだと思う。
偶然のハート
作業を終え、キッチンに立つ。
いつものように炭酸水を用意しようとして、ふと窓の外、庭のミントが目に入った。
摘み取った葉を指先で揉み、グラスに放り込む。その瞬間、手が止まった。
「……ハートだ」
グラスの底に沈んだミントの一葉が、偶然にも綺麗なハート型に見えた。
さっきまで水飛沫と格闘していた意識が、急激にこの小さな「形」に吸い寄せられる。
思わず、まだ出しっぱなしにしていたOM-1を手に取った。
レンズは17mm F2.8。
最短撮影距離付近まで寄ってみる。炭酸の泡がミントを飾り、絶え間なく上昇していく。
ファインダー越しに眺めるその気泡の動きが、ひどく心地いい。
調律の余白
洗車後の解放感に、思わぬ発見が重なった。
もし15時に慌てて洗車を始めていなければ。
あるいは、ミントを浮かべる手間を惜しんでいれば、このハートに出会うことはなかったはずだ。
炭酸の弾ける音。鼻腔を抜けるハーブの香り。
そして、磨き上げたフロントガラスの向こうに広がる、汚れのない夕暮れ。
生活を整えるということは、こうした小さな幸運に気づくための「隙間」を、自らの手で作っていくことなのかもしれない。
洗車後の火照った身体に、最もキレのあるリフレッシュを与える「強炭酸」を
リンク
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