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幽玄の世界を身体で知る - さがみはら能「摺り足体験」レポート:武道の極意に通じる伝統芸能の身体技法

日本の伝統芸能、能。その洗練された様式美は、どこか近寄りがたい印象を与えているかもしれません。しかし、先日、相模女子大学グリーンホールで開催された「さがみはら能」に参加し、その印象は大きく変わりました。今回は、能の世界をより身近に感じられる「摺り足体験」を通して見えてきた、能の身体技法と、それに込められた精神性についてレポートします。

イベント情報:第26回 さがみはら能 (2025年3月8日開催)

参加した「さがみはら能」の情報はこちら!

  • イベント名: 第26回 さがみはら能
  • 日時: 2025年3月8日 (土) 13:30開演 (13:00開場)
  • 場所: 相模女子大学グリーンホール 大ホール
  • 内容:
    • <1部>
      • すり足体験(舞台を歩む)
      • 仕舞「猩々(しょうじょう)」
    • <2部>
      • 仕舞「高砂(たかさご)」「羽衣キリ(はごろもきり)」「船弁慶(ふなべんけい)」
      • 狂言「附子(ぶす)」
      • 能舞「序ノ舞(じょのまい)」
  • 出演者: 松山隆雄、松山隆之、山本則重、若松隆、山本則秀、土田英貴、伶以野陽子 他
  • 参加費: 一般 3,000円 (当日4,000円) / 小・中学生 500円
  • 備考: 出演者による演目の見どころ解説あり。
  • 詳細: 第26回 さがみはら能 | 相模女子大学グリーンホール

毎年、開催されています。 能楽の世界に足を踏み入れる絶好の機会です!能楽師の方々の解説を聞きながら、能の奥深さに触れてみましょう。子供向けの料金設定もあるので、ご家族での参加もおすすめです。

能楽師:松山隆雄氏が語る、能の本質:日常と非日常を繋ぐ身体表現

イベントの冒頭、講師を務める能楽師の松山隆雄先生から、能の本質について解説がありました。松山先生は、能を単なる古い芸能として捉えるのではなく、現代を生きる私たちにとっても意味のある身体表現として捉えているようでした。

先生は、能について次のように語られました。

  • 「能は日常の動きを洗練させたもの」:能の動きは、歩く、座る、立つといった日常的な動作を、極限まで洗練させたもの。無駄な力をそぎ落とし、身体の軸を意識することで、より美しく、力強い動きを生み出す。
  • 「能は心と身体の対話」:能は、単に技術を披露するだけでなく、演者の内面を表現するものでもある。動きを通して感情を伝え、観客の心に共鳴を起こす。それは、まるで心と身体が対話しているかのようである。

これらの言葉から、能が単なる技術の伝承ではなく、人間の身体と心の可能性を追求する芸術であることが伝わってきました。

摺り足体験:松山隆雄氏の指導のもと、床との対話から生まれる、身体意識の覚醒

能独特の歩き方である「摺り足」。今回の体験会では、能舞台に上がり、松山隆雄先生の指導のもと、実際に摺り足を体験することで、その世界観を体感しました。

摺り足は、見た目は地味な動きですが、実際にやってみると、バランスを取るのが非常に難しいことが分かります。足の裏全体を床につけ、膝を内側に絞り、重心を低く保ちながら、ゆっくりと歩を進める必要があります。

今回の体験会で松山先生から指導された、摺り足のポイントを改めて整理します。

  • 足の裏全体を床につける: かかとからつま先まで、足の裏全体を床につけて歩く。
  • 膝を内側に絞る: 膝を内側に絞り、内転筋を意識することで体幹を安定させる。
  • 重心を低く保つ: 腰を落とし、重心を低く保つことで、安定感を高める。
  • 呼吸を意識する: 深くゆっくりとした呼吸をすることで、心身をリラックスさせる。
  • 無心になる: 雑念を払い、無心になることで平衡感覚が研ぎ澄まされる。

これらのポイントを意識しながら、ゆっくりと歩を進めていくと、徐々に身体の中心が安定し、舞台との一体感を感じられるようになってきました。

能楽師直伝!武道の極意に通じる摺り足の奥義

体験会では、松山隆雄先生から、摺り足の奥義を伝授していただきました。先生は、摺り足は単なる歩き方ではなく、身体と心を調えるための手段だと強調されました。

先生の教えは、武道にも通ずる身体操作の極意に通じるものでした。

  • 内転筋と体幹: 膝を内側に絞り、内転筋を意識することで体幹を安定させる。これは、武道における「重心を定める」という考え方と共通するものです。体幹を安定させることで、上半身の動きがよりスムーズになり、力強い動きを生み出すことができます。
  • 大腰筋と姿勢: 腰骨の中にある大腰筋を意識し、上半身と下半身をつなぐイメージを持つ。これは、武道における「姿勢を正す」という考え方と共通するものです。正しい姿勢を保つことで、無駄な力みがなくなり、効率的な身体運動が可能になります。
  • 呼吸法: 深くゆっくりとした呼吸を意識することで、心身をリラックスさせ、動きをスムーズにする。呼吸を意識することで、身体と精神が一体化し、より深い集中力を得ることができます。
  • 精神統一: 雑念を払い、無心になることで平衡感覚が研ぎ澄まされる。

これらの指導を通して、摺り足は単なる歩き方ではなく、武道の基本に通じる身体操作であることを実感しました。

まとめ:能から学ぶ、身体と精神の調和

今回のさがみはら能 摺り足体験を通して、日本の伝統芸能である能の世界に触れるとともに、身体と精神のつながりについて深く考える貴重な機会となりました。能は、いにしえの武士たちが心身を鍛え、精神性を高めるために実践してきた身体技法であり、現代を生きる私たちにとっても、多くの示唆を与えてくれます。

今回の体験を通して、以下のような気づきを得ることができました。

  • 能は、人間の身体と心の可能性を追求する芸術である。
  • 摺り足は、身体を意識し、呼吸を整え、精神を集中することで、心身を調和させるための有効な手段である。
  • 能は、武道の極意に通じる身体技法であり、身体操作の基本を学ぶことができる。

能の世界は奥深く、その全てを理解するには長い年月が必要です。しかし、摺り足体験のように、身体を通して能に触れることで、その入り口に立つことができるはずです。日常の喧騒から離れ、能の世界に身を委ね、心身を解き放つ体験をしてみてはいかがでしょうか。

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